川崎仙台薪ストーブの会:キリンの斑(まだら)と樹皮、このきなんのき

朝は快晴、が午後には雲が厚くなってきたものの、気持ち良い仕事日和。

キリンの首の下は今日の玉切材集積所です。立っているのは右からサクラ、コナラ、そして3番目はミズナラでしょうか。葉っぱがついていてさえ分らないのに樹皮だけからはほとんどの場合判別不能です。樹皮は「幹が太くなるにつれて外側の組織は枯死し、 - - - そのはがれ方や裂け方は樹種ごとに異なる」ために特徴がでる(林将之、樹皮ハンドブック、文一総合出版)とのこと。因みにこの本の著者が主宰している樹木鑑定サイト「このきなんのき」をみるとマニアというのは凄いと感心します。

 閑話休題。それなら樹皮模様の成因は「キリンの斑模様は粘土薄層の乾燥による罅(ひび)割れ模様(中略)によく類似している」から始まる「キリンの斑模様に就いて」の平田森三説(岩波書店、科学1933) − 発達のある段階で皮が内部の成長に耐えられなくなってひび割れが生じ、そのひびがどう埋まるかによってキリンになったり豹になったりする。それは田んぼが干上がったとき泥に模様ができるのと同じ原理による − と同じじゃーないですか。

この、当時27才の若手物理学者の、生き物を粘土にたとえるという突飛な着想に生物学者からは異論が続出しました。その経緯と、最近発展したパターン形成の理論の嚆矢としての評価は「キリンの斑論争と寺田寅彦岩波書店、2014」に詳述されています。平田の師の寺田は論争のまとめこそ書いたものの、この書名は多分に販売政策の匂いがします。一方、平田はこのたわいない思いつきにも見える問題提起から破壊現象一般に研究を進めました。

自然科学の学部レベルでの講義は多くの場合大筋は決まっているのでせいぜい肉付けや最近のトピックとの関連などに特色をだそうと努力するのが凡百の教授ですが、物理の範疇を越えた研究テーマの広さ、ユニークさ(命中率を高めた捕鯨の平田銛など)で知られた平田先生の講義は全く独特の「平田学」でした。著書を残す暇もなく定年直後の60才で広島での被曝による白血病で逝去されたのはつくづく残念でした。


 さて、雪の降る前になんとか北斜面の伐倒木を搬出したいと今日も臨時のB作業。季節は人間の思惑なぞ関係なく進んでいきます。(左上より時計まわり)コブシの実は既に赤く色づき、台風19号の置き土産で沢は増水して橋は水浸して泥まみれでした。例によっていつの間にか材が下され綺麗に並べられていました。12日の月例会で搬出路が拡張され、すれ違いができるようになっていました。手前のひまわり滑車が無聊をかこっています。


 今日は賽の河原のひとつを片づけること!を目標として待避所を利用して大小二つのクローラを10往復させました。(左上)積み込んでいますが欲をかいて積み過ぎるとクローラが空回りして(左下)こういうはめになります。今日の賽の河原のビフォアー(右上)とアフター(右下)です。


(上)ひとつ済んだら次に向かって道を作ります。(右下)次の目標の谷。これだけなら楽勝ものですが実は奥が− − 。一方では黙々と(かどうかチェーンソーの音でわからないが)玉切りするひとも。安全ズボン(チャップス)でプロに見えます。

一説によれば大きいほうのクローラあと30杯で搬出が終わるとか。一日10往復が標準とのことなのであと3労働日です。はやくここでの作業を終えて寒くなる頃にはストーブのある小屋に戻りたいものです。