番外14回目 薪の会 釣瓶式矢遠

曇 台風接近中

 写真は“古今の山林技術者が英知を集め育んできた伝統技”についての本です。まえがきには「今後類書が出版されることはないだろう」から「家庭に1冊備え宝物誌として後世に伝えられんことを願う」とあります。前半は多分正しいでしょうが、後半は無理というもの。現代でこの本に興味を持つ人は相当の変人でしょう。薪の会の会員くらい? 1987年出版ですが3年ほど前に入手したものも初版第一刷でしたから何部売れたことやら。その後出版社も倒産してしまい、もう新本としては買えません。

 本は買えなくともネットで“中川木材産業の社会奉仕の一環として運営”されているWeb伝統林業民俗資料室http://www.woodist.com/index.html(伝統伐採 忘れられた修羅)で中身を見ることができます(表紙とまえがきはありません)。修羅(この本では“すら”とルビが打ってあります)をはじめすべて規模にしても技術にしても薪の会で真似できるレベルの話ではありませんからあまり実用上の参考にはなりませんが、昔の人は地球の重力だけですごいことをしたものだとつくづく感じさせます。

 山の南側斜面中腹の放置木を古来の方法のひとつである釣瓶式矢遠で搬出しようというのがO氏のプランです。普通の矢遠には傾斜が足りないとのこと。先日作った薪棚のすぐ後ろの木にプーリー(横)を固定し、山の上には写真の鳥居にプーリー(縦)が二つ、カメラ位置の切り株に固定したプーリー(横)がもう一個あって、その間にループにしたワイヤロープを張ってロープウェーのように複線で交互に往復させようというわけです。このあたりには放置木が散在しています。下にはベースキャンプの白い屋根と煙が見えます。

 で、成功!何本か下ろしたところで小雨模様となり、今日の仕事に満足して最後にチェーンソーを下ろしたところ。と云うのは嘘で、やめてから写真を撮らなかったことに気づき、その辺りのものを適当に逆に上げて撮ったのがこの写真です。最初の目論見は自重で自走でしたが、傾斜が緩かったことと使用したロープが重かったことで自走はしてくれず、ロープを手繰らなければなりませんでしたが、それでも担ぎ下ろすのとは大違い。矢遠や転がし落とすのと違い、傷もつきません。そしてなんと着地点は薪棚のすぐ後ろです。