東電の嘘:直下型地震ってなんだ?

晴 時々小雪

 地震津波後2週間余経ちました。吉村昭三陸海岸津波(海の壁)」は遠い昔の物語として読み、まさかまさかそれ以上のものが自分と同時代に起こってその地震を体験する−私の被害はごく僅かでしかありませんが−とは思ってもみませんでした。実は私は疎開で2歳まで今の陸前高田市に含まれる土地(当時の小友村)に住んでいたそうです。記憶にはありませんが。1960年のチリ地震津波の時に父母が知人の安否を案じていたのはよく覚えています。15年ほど前に高田の松原を訪れた時、巨大な防潮堤を見てこれなら絶対大丈夫だろうと思ったのですが、全く役に立たなかったようです。月並みな表現ですが、自然の猛威を思い知らされました。

 ところで当ブログでは世の中の嫌なことは皆棚に上げてツリーハウスとか薪ストーブの会とか野遊び山遊びに関連した楽しいことだけにして世の中への不平不満なぞは絶対書くまいと思っていたのですが、禁を破って今回だけ不平不満を書きます。今更東電の隠蔽体質をあげつらっても何もならないことは解ってはいますが - - 。

 初めて原発のニュースを聞いたのは停電でラジオしか情報がなかった12日の夕方のことだったと思います。「直下型地震により福島第一原発で何か起こった」とのことでした。その時は原発事故については何も報道されていなかった(少なくとも私は知らなかった)ので、巨大地震には耐えたけれど余震でなにかついでが起こったらしい、大事故につながらなければ良いな、程度にしか思わなかったのですが、その後の事態の推移は皆様ご存知の通りです。でも実は私は15日まではラジオ以外の手段で外界の情報を得ることができなかったのでそれまでの途中経過の報道については今でもあまり詳らかではありません。

 我家ではようやく通水するようになり、未だ断水、断ガス中の地域の方には申し訳ありませんがお風呂にも入れ、一息ついたのでちょっと調べてみました。「直下型地震で何かが起こった」という発表を胡散臭く思ったからです。

 ネットを見ると平成23年3月12日付け(時刻についての記載なし)の東電プレスリリース「福島第一原子力発電所1号機付近での白煙発生について」で「本日、午後3時36分頃、直下型の大きな揺れが発生し、1号機付近で大きな音があり白煙が発生しました」とあります(写真参照)」。どう読んでも12日15時36分に福島第一原発直下が震源地震があって(11日14時36分の三陸沖巨大地震では原発は自動停止したから問題ない)そのためちょっとした事故が起こって煙がでた程度としかとれません。その発表が私が聞いたNHKラジオのニュースになったと思われます。その頃既に外国のメディアやユーチューブでは福島第一原発1号機「爆発」として画像が公開されていたようです。

 気象庁のホームページからのその時刻前後で発生した地震を見ると
2011年3月12日15:44: 0.0 36゜36.0'N 141゜ 0.0'E  40km M:4.7 茨城県沖 最大震度:3
2011年3月12日15:40: 0.0 36゜42.0'N 141゜ 0.0'E  50km M:4.3 茨城県沖 最大震度:3
2011年3月12日15:19: 0.0 39゜12.0'N 142゜30.0'E  10km M:5.4 岩手県沖 最大震度:4

 そんな地震はありません。何故起こりもしない「直下型の大きな揺れ」をでっちあげたのか?正気の沙汰とは思えません。正気ではない人がどう考えたかは「想像外の外(一時はこんな云い方がありました)」ですが、「これは地震のせいですよ、当社の責任ではありませんよ」という予防線を張ろうとしたのでしょうか?あるいは巨大地震による原子炉の損傷をとりあえず隠そうとしてすぐばれる嘘をついたのでしょうか?最初のニュースを聞いた時の私の印象(巨大地震とは一応関係なさそうだ)はまんまと東電の広報の意図にはまってしまったといえるでしょう。いずれにせよその後津波被害の悲惨さと原発事故の深刻さが明らかになるにつれて東電にとっては幸いなことにこのプレスリリースの小さな嘘など誰にも気づかれず吹き飛んでしまったというのが真相ではないでしょうか。

 この会社は、すくなくともそのトップ達は、情報隠蔽に関して「懲りる」ということが無いようです。それより一歩進んで「でっち上げ」も辞さないようです。もし幸い有耶無耶に終わらせることができたら、メルトダウンによる爆発も「地震によってちょっと建屋が壊れて煙がでた」ということになったのではないかと思わせます。

 今耳を疑うニュースが入ってきました。東電は被災で検針できなかった世帯に対し2月分と同額を請求しているとのこと。誤報であることを信じます。11日の津波で家を流された人に3月末までの請求書が送りつけられる!福島原発のために強制的あるいは自主的に避難している人の空家に東電からの請求書が届く!北茨城市などではそんな不運な人もいるかもしれません。ブラックジョークだったとしたら笑えますが。でももし本当なら - 多分本当でしょう - この会社には世間の常識というのは無いのでしょうか。

p.s. ひょっとして事実関係に誤認があったら、東電ともあろうものが隠蔽ならともかく明々白々な嘘を発表することはないかも、という一抹の不安、というより希望、があったのですが、何人かの方がtwitterでTBSはその時間に地震はなかったと報道していると指摘していました。
 
p.s.2 請求書に関しては余りのことに非難ごうごうで該当する300万余の世帯に詫び状を送るとの報道あり。まさか葉書ではないでしょうから 300万×(80円+印刷代+封筒代+そのための人手)=数億円以上。まともに振舞ってその分を被災者の救援に廻せ!